加工ラインの蛇行とは、カーフがブレードの進行方向に向かって左右に曲がりながら加工する現象を指します。図1および図2は、実際にハブブレードでウェーハを加工したときのカーフを上面から見たものです。図2の蛇行発生時のカーフは波を打つように曲がっていることが分かります。
蛇行の要因や影響は様々な事象が考えられます。また、蛇行の発生が他の不具合を誘発する場合もあります。
一般的に、スピンドル回転数が高いほど、蛇行が発生する可能性は高くなります。スピンドル回転数を高くすることでチッピング改善など加工品質が良化する利点はありますが、蛇行のリスクは高くなってしまいます。
※本加工例は、ハブブレードを用いて蛇行が発生しやすい条件下で加工を行った結果です。
一般的に、カーフ幅が狭く刃先出し量が長いほどブレード強度が低下し、蛇行が発生する可能性は高くなります。狭カーフ化は1ウェーハ当たりのチップ取り個数増加、長い刃先出し量はブレードライフ向上といった利点がありますが、蛇行のリスクは高くなってしまいます。
ハブブレードのカーフ幅と刃先出し量の関係を示す指標としてアスペクト比があります。アスペクト比が高いほど蛇行しやすく、低いほど蛇行しにくい傾向にあります。
実際の加工においては、スピンドル回転数とブレードのアスペクト比は複合要因として考慮する必要があります。例えば、蛇行しにくい低スピンドル回転数でもブレードのアスペクト比が極端に高ければ蛇行する場合があり、逆に蛇行しやすい高回転数でもアスペクト比が低ければ蛇行しない場合もあるからです。下図は、検証テストの結果や経験則から、スピンドル回転数とアスペクト比による蛇行発生の目安を示したものです。例えば、アスペクト比30のブレードを使用する場合、蛇行発生の可能性が低い領域は45,000min‐1以下が目安になります。
この領域付近でブレードを使用する場合、ワークや加工環境の微小な変化が蛇行を誘発することがあります。量産前のご評価の際に、カーフ規格の下限域や安全率を考慮した回転数での検証を行うことが予防策の1つとして挙げられます。 また、アスペクト比の算出に用いるカーフ幅や刃先出し量には規格幅があり、この上下限の値付近でも蛇行の発生有無に影響が生じることがあります。
ここでは要因1~3以外に蛇行の発生に影響を与える要因を記載します。
ハブブレードを用いたダイシングでは、製品ウェーハ加工前のプリカットを推奨しています。プリカットの未実施や量が不足している場合、加工負荷が大きくなり蛇行発生の可能性が高くなります。
加工速度が速い、切り込み量が深い、ワークの金属膜が多いなど負荷が高い加工では、蛇行が発生しやすくなります。加工条件やワークを変更したタイミングで蛇行の発生が見られる場合では、このような加工負荷が要因と考えられます。
※意図的に蛇行しやすい条件下で、切り込み量だけを変えて検証した結果です。
CO2インジェクタや切削水用添加剤などの影響でブレードの刃先部が腐食した場合、ブレードの強度が低下し蛇行が発生する可能性があります。
加工ラインの蛇行は、スピンドル回転数とブレードのアスペクト比(カーフ幅と刃先出し量の比率)に大きく影響され、プリカットや加工負荷、切削水などの使用環境からも影響をうけます。蛇行を防ぐには、これらを十分に考慮したうえで加工条件の設定を行う必要があります。